魔人の闘将
- 人と人の心はいかに儚く、誤解が多いものなのか…
いくつもの想いはすれ違い、交錯し、やがて憎しみへと姿を変える…
大国ルクレチアに訪れた束の間の平和。
辺境の国ドラガーを襲った旱魃…
ドラガーの民を率いる若き指導者は恋人の助力を得て、ついに隣国ルクレチアとの国交による、旱魃の被害を回避するすべを見出していた…
一方のルクレチアでも、異文化に対して寛容な将軍の手によって両国間の平和と国交は目前まで迫っていた…
そう、すべては上手く行っていたはずであった…
しかし因果律が幾重にも重なり合って、1人の魔人と大きな悲しみを生み出す…
魔人の襲撃に抗う人々、戦場を駆け抜ける黒き翼…
魔人の意地と父を殺された青年の激突!
そして戦場に交わされる哀しき愛…
R:MIX町田流「ロミオとジュリエット」
戦争が如何にして生まれ、如何に悲しいものなのか
戦いを始めてしまった男は平和の為に如何に責任が取れるのか…
1999年七の月…
R:MIXが初夏を最も熱くする!!
魔人の闘将 ストーリー
- ルクレチア西部イスペニア地方とその西に広がる 大国エスペラントの間を境界のようにゆったりとさえぎるパラティア山脈…
皇太子ヘクトールとリシェラ=マルセイユ- そのゆるやかな山脈の谷間には古くはユリウス帝の時代にイスペニア地方を追われたドラガーと言われる部族がドラガー国を名乗り、小国を形成し、独自の文化圏を形成していた… しかし、ドラガーには建国以来の危機的状況が訪れていた。
史上最大の大旱魃による水不足、作物の不足によって次々と死んでいく国民… そして、病床に臥せり起き上がる事もままならない国王陛下…そんな危機的状況の中、皇太子であるヘクトール=ディ=マジスン(ヘクター)は、婚約者であり平和主義者であるリシェラ=マルセイユとともに、豊富な水源を持つイスペニア地方の援助を得るため、イスペニア地方を束ねるアイザム=ゼニオ=ミゲール将軍との間に和平協定を取りつけるよう画策する。異文化に対し理解を示し、ドラガーに伝わる数々の魔術に興味を持ったアイザム将軍とドラガーの平和を第一に考える全権使節リシェラとの交渉はすべて上手くいっていた、そう、ある一点を除いては… ドラガーの国王には代々、武力や魔術、策略・治世に秀でた4人の死将軍と呼ばれる者達がいた。
重戦騎バルバス=カタロニア、呪術師グレゴリオ、密林の騎士サルート、穿孔のジェリル=ティターナの4人である。中でも国境付近に領土を構え、ルクレチアとは国境問題で諍いを起こし続けてきた若き女将軍ジェリルはヘクターやリシェラの和平政策に対して猛反発を起こし、イスペニア地方を再び武力によって取り戻す事を訴える。しかし、それら反対勢力を退けたヘクターは国境付近にバルバス軍を控えさせると、リシェラ率いる全権使節団とともにアイザム将軍との最後の会談に赴いた。
国交を夢見て熱く語るチャック- 一方、イスペニア地方を司るアイザム将軍の参謀府には将軍の一子で将軍と常に比較され続けられた事で殻に閉じこもってしまった青年ジャン=デューク=ミゲール、将軍の優秀な執政官であるセニア=カリスマン、文官チャック、武官ロバート=ハルフォードら若き世代による自由闊達な空気が立ち込めていた、チャックを中心にドラガーとの交渉を進めていた彼らもまた、ドラガーとの平和に何の疑問も抱いていなかった…
交渉の席を半ばでリシェラに任せると、彼らの元を訪れるヘクター。 4人はヘクターの寛容にして誠実な武人としての態度に感銘を受け、すぐに打ち解ける仲となった… 半ば心を閉ざしていたジャンにもそれは同様で、 ヘクターの剣の腕前にロバート共々打ちのめされながらも尊敬の念さえ抱いていた…
リシェラを失ったヘクターはルクレチアに対して牙をむく!- 一つの爆音が静寂を打ち切った。
交渉の席上の方角から聞こえたそれは彼らの緊張感を高める素材としては申し分ないものであった… すぐに駆けつけるヘクター、しかしそこには己が愛したリシェラとその近習達の死体だけが転がっていた。 わずかに息のある兵士から、ヘクターは休憩に立ったアイザムがいなくなってすぐ、 正体不明の兵士らが現れた事実を知る。そこへ戻ってくるアイザム、 ヘクターは自分達が大国ルクレチアの謀略にはまった事を悟る、 そして直ちに剣を抜くとアイザムらイスペニア統幕を一瞬にして斬り捨てた。
そこへ駆けつけるジャンやチャック達4人、突然の父親の死に動揺を隠せないジャン、 和平の夢が断たれそうになることを恐れ必死にヘクターを諌めるチャック、 しかしすでにヘクターのその目は復讐と言う名の『魔』に侵されていた… チャックの話しも半ばに彼を斬り捨てると、残りの3人を相手に戦いを挑む。
ジャンたちは戦場で気を失った少女シャクティを発見する- そこへ、国境に陣を構えていたバルバス将軍の率いる一軍がヘクターの救出に駆けつけ、ジェリルやグレゴリオらの活躍もありヘクターをドラガーへと逃がしてしまう。気を落とすジャンやセニア…そんな時彼らは双方の死体の転がる戦場跡に一人、気を失った少女シャクティ=リズ=マジスンを発見する。気が動揺していたシャクティは自分を助け起こしてくれたジャンの足を手に持ったナイフで突き刺してしまうが、気のやさしい青年ジャンは、そんなシャクティを客人として迎え入れ介抱する。しかしヘクターの妹であるシャクティは自分の名前以外のすべての記憶を失っていたのであった…お互いの微妙な立場の中、悲しみを埋め合うように慰め合う二人…いつしか二人は愛し合うようになっていた…
ドラガーでは・・・
ルクレチアを盛り立てようとするセニアを若き軍師ロバートが支える- 大国ルクレチアのやり方に失望したヘクターがその身を魔人に変え、 グレゴリオ将軍に策を任せると、死将軍らとともにルクレチアに対し進撃を開始していた、 一方で大国ルクレチアも、東のザクソニアとの小競り合いのさなかのため、セニアらの祈りもむなしく中央政府からの増援は無い厳しい状態での開戦となった。戦場では指揮官グレゴリオとセニアを助けるルクレチアの若き軍師ロバートの知略と軍略がぶつかり合いとなり、いつしかセニアの心は死んだチャックからロバートへと移ろうとしていた…
戦いの中、軍略を優勢に進めるロバートはグレゴリオの作戦の真髄は城の裏手からの奇襲にあると見て、自ら一軍を率いて城の裏手に迫ろうとしていたサルート軍を打ち破る。
囮の軍となったサルートの弟シラッジはロバートを道づれに裏門の突破口を開く- が、それはヘクターの策による囮の軍であった… 事実上の本隊ヘクター軍がさらに背後に控えていたのだ、おのれの軍略を破られたロバートは裏門を死守するが、ヘクターによって討ち取られてしまいイスペニア城はついに陥落してしまう。バルバス一団が逃げるジャン達の前をさえぎる
逃げ惑うジャンとシャクティとセニア… バルバス将軍の一団から血路を開こうとしたとき、不意にヘクトールと出会ってしまう… 驚愕するヘクトール、行方不明の妹はジャン達ルクレチア軍とともにいたのだ… 一瞬の動揺を見逃さず血路を開くジャン。しかし、同時にシャクティも記憶を取り戻し自らの境遇を呪ったのであった… 愛する男と兄とが憎みあい、殺し合おうとしているのだから。そして連鎖的に取り戻される記憶、そうリシェラとともにあの会談の席上にいたシャクティはリシェラ達を暗殺した犯人を目撃していたのであった…
陥落したイスペニア城で不気味に暗躍するグレゴリオ- イスペニア城は陥落し、ヘクターによる生き残った民衆への懐柔策の提示演説、ジェリルやバルバスによる残党軍の掃討、サルートによる城内警備が日夜行われていた。そんな中で不気味に暗躍するグレゴリオはサルート・ジェリル・バルバスを次々とマンドコラと呼ばれる麻薬性の植物と己が呪法をもって手なずけていった… そう、リシェラを暗殺したのも、戦争を起こさせたのも、国王を病から死に追いやったのもすべてこの男の仕業であったのだ、 父親を国王に殺され服従していたかに見えたグレゴリオは長年このチャンスを伺っていたのだ、すべてのつじつまが一本に合った時、グレゴリオは死将軍のすべてをヘクターにぶつける、動揺するヘクターに襲いかかる死将軍ら兵士達、追い詰められたヘクターであったが その時マンドコラの呪縛から己の意志で逃れたバルバス将軍に助けられる、命がけでヘクターを逃がそうとするバルバス、しかし多勢に無勢…ヘクターはグレゴリオの術に身を焼かれ、バルバスはマンドコラに冒されたサルート・ジェリルによって討ち取られてしまう。
グレゴリオは地脈の力をで人々を隷属させると…
ジャン・シャクティ・セニアは秘密の抜け道を通ってグレゴリオ暗殺を図る- 鎮魂招起隷呪の法によって作られた、生ける屍軍団と二人の死将軍の力によってイスペニア地方は大規模な殺戮が繰り返された、町は火を放たれ、勇敢に戦い殺された人々は生ける屍となってグレゴリオに従い、今度は仲間達を襲っていった… イスペニアに絶望の空気が広がり、ルクレチア政府が重い腰を上げた時、ジャン達は城内へ抜ける秘密の通路をくぐり、グレゴリオの暗殺をもくろむのであった… 魔に侵されたイスペニア城でそれを待ち構えるグレゴリオ、ジャン達の怒りの炎が燃え上がった時、シャクティの魔術は冴え渡り、黒き翼が再びその翼に風を纏った!!
そもそもは「闘将!ダイモス」をテーマに町田流ロミオとジュリエットを作ろうとしたところ、「燃えよ剣」風味になってしまったこの作品。舞台はルクレチア東部ザクソニアとの長く続く戦争ではなく、西側の小国との小競り合いというのがシリーズ的には珍しく、おそらくはこれから執筆予定の『魔王転生』へのリンクになる予定である。尚、この作品の舞台を利用して(グレゴリオの「だが、魔は既に全土に向けて解き放った!」はそのための準備)『魔者達の愛』なーんてのを書き起こそうかなーなんて思っています(いつになるやら)。この作品の人物について少し解説すると…
ジャンは「スタートレックネクストジェネレーションズ」のジャン=リュック=ピカード艦長からシャクティは「Vガンダム」のヒロインから、ジェリルは「ダンバイン」のジェリル=クチビをもとに、「ティターンズ」(Zガンダム)からティターナの姓をつける、後はロバートぐらいで、これはメタルゴッド「ジューダス・プリースト」の元ボーカル「ロブ・ハルフォード」から… セニアは「魔装機神」から… この作品ではそんなものかな…